GUIDE創業ガイド

  1. 3.創業手続とは?

創業に必要な手続と専門家

創業準備を進め、開業が間近になってくると、許認可、法人設立、各種届出などの手続が必要になってきます。
法人・個人事業などの創業形態や、業種、雇用の有無などによって、手続のタイプは千差万別。
おおいたスタートアップセンターでは、創業準備者向けの「創業準備ロングランセミナー」を毎週火曜日に実施していますが、セミナーで話を聞くだけでは「自身の創業に必要な手続」がピンと来ないのも仕方ないところです。
このガイドブックでは、創業手続に精通した専門家に「手続の入口」について概略を解説していただきました。
皆さんは、今の時点で全てを理解する必要はありません。
手続の種類や内容などをざっくり読み、自分でやれそうなこと、専門家に依頼しなければできそうにないことを大まかに把握していただければ十分です。

▶どこまで無料?どこから有料?

P15以降で解説しますが、創業関連の手続を代行する士業は、大きく4つあります。

税理士
税務関係の届出・手続
司法書士
会社の設立手続
行政書士
許認可等の手続
社会保険労務士
雇用に必要な手続

これらの専門家の行う業務は、法律で定められた専門業務であり、無資格の方が代行することはできません。書類作成等の作業を専門家に代行してもらう場合、有料になります。

一方、「勉強したうえで、本番の手続は自分でやる」という方は、無料の相談会などがある場合には、そこで話を聞いた上で、自分でやれる範囲で準備を進めるという方法もあります。
ある程度の予備知識を持った上で専門家に依頼すれば、「単なる丸投げ」でなく、自身も理解しながら手続を進められるかも知れません。

創業時には何かとお金が入り用ですが、「何が何でも無料」と決め込むのではなく、このガイドブックを見て、皆さんにとっての手続の難易度を判断し、創業実現の際の参考にしていただければ幸いです。

一口メモ

頼れる経営相談所「よろず支援拠点」

大分県よろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所です。
個人事業主、小規模事業者・中小企業の皆さまや創業をお考えの方の売上拡大、資金繰り改善や知的財産活用など、様々な経営課題について、「何でも、何度でも」無料で相談できるのが特徴です。
現在 19 名の専門家が在籍しており、税理士や社会保険労務士もいます。
皆さんの創業準備を進める力強い味方として、是非ご活用ください。

[お問い合わせ先]

・大分県よろず支援拠点
大分市東春日町 17-20 ソフトパークセンタービル 2F
(公益財団法人大分県産業創造機構内)
※相談は、事前予約制です。

税務関係の届出

▶創業時の税務関係の届出

新たに事業を始めたときには、納税地の所轄税務署長への届出が必要です。

個人事業を始めた場合

届出 届出
個人事業の開廃業等届出書 事業開始等の日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書 開業の日から2か月以内
青色事業専従者給与に関する届出書 青色事業専従者を有することとなった日から2か月以内
棚卸資産の評価方法・減価償却資産の評価方法の届出書 事業を開始する年分の確定申告期限まで他
給与支払事務所等の開設届出書 開設の日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 申請書を提出した月の翌月までに通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。

※その他消費税の課税事業者を選択する場合や、消費税の課税期間の短縮を選択する場合、簡易課税を選択する場合など一定の届出が必要になります。

法人設立の場合

法人を設立した場合は法人設立届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
この法人設立届出書には、次の書類を添付します。

  • 定款等の写し
  • 設立趣意書
  • 株主名簿の写し
  • 設立時の貸借対照表

このほか、個人事業の場合と同じように、青色申告書の承認申請書、棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却方法の償却方法の届出書、有価証券の一単位あたりの帳簿価額の算出方法の届出書などもあります。

▶青色申告制度とそのメリット

青色申告制度とは、一定の帳簿書類を備え付けて所定の取引を記録し、その書類を保存することによって、所得税、法人税の計算上、特典を受けられる制度です。正確な所得計算の前提となる記帳の改善や申告制度の円滑化などを目的に設けられています。

個人事業の青色申告のメリット

青色申告特別控除・・・
最高65万を所得から差し引くことができます。支払うべき税金が安くなります。
青色事業専従者給与の必要経費算入・・・
生計を一にしている配偶者や15歳以上の親族で、事業に専ら従事している人に支払う適正な額の給与は、必要経費にすることができます。
純損失の繰越・・・
赤字(純損失)となっても、その金額を翌年以後3年間の黒字の金額から引くことができます。

青色申告のデメリットは記帳と帳簿の保管の煩わしさでしたが、平成26年1月の税制改正により、白色申告をする場合(青色申告をしない場合)であっても記帳と帳簿の保管が義務付けられたことにより、青色申告は、よりメリットが強調される制度になりました。

法人設立の場合のメリット

法人設立の場合も青色申告を選択することができます。この場合には欠損金の繰越控除(9年)、繰り戻し還付、減価償却の特例、税額控除の特例、などの特典があります。

▶確定申告とは

個人事業での確定申告とは、1月1日~12月31日までの1年間の会計結果を「確定」し、翌年2月16日~3月15日の間に国へ「申告」することをいいます。
会社員の場合は確定申告の代わりに会社で「年末調整」を行うので自分で申告する必要はありませんが、個人事業主の場合は、基本的に自分で確定申告をする必要があります。
1年間の売上や経費などを日々帳簿付けして、それらを集計したものを確定申告書類に記入していきます。これを確定申告時期に税務署へ提出します。

税理士によるサポート

事業を始めるときに手続を怠ると、後になって税金を多く支払うことになったり、本来受けられた特典を受けられなかったりなどの問題が出てきます。
最初の確定申告のときになって初めて税理士に相談するのではなく、開業準備のときからぜひ税理士に相談してください。
税理士は開業時のご相談の他、税務代理、税務書類の作成、税務相談、会計業務サポートなどの業務を行っています。

会社の設立手続

▶会社と個人事業主との違い

会社とは、事業活動に必要な資金や労力を出資して成立する社団(人の集まり)法人です。会社は個人とは別個の存在であり、権利を取得したり義務を負ったりします。会社の名前で商品を売ったり、代金を受け取ったり、会社名義の通帳を作ることもできます。会社は税金も負担します。ただし、会社を実際に運営するのは代表取締役などの機関(役員)です。
会社は人の集まりで、人の入れ替わりもありますので創業者が亡くなっても事業を続けることができます。そのため取引の相手方は個人事業主より会社の方が安心して取引ができ、社会的な信用が高いといえます。

登記とは

 会社は、登記をすることによって成立します。法務局に行って手数料を支払えば、商業登記簿を閲覧でき、会社の商号(名前)や本店の所在地、資本金の額など重要な事項が載っています。初めて取引しようとする人は、商業登記簿を見ればその会社がどんな会社か知ることができるのです。

会社の種類

  • 株式会社
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 合同会社

株式会社は、日本で最も多く存在する会社で、会社を設立しようとする方の多くが株式会社を設立されています。なお、有限会社は株式会社の一種ですが、法律が改正され、新しく有限会社を設立することはできません。

▶株式会社とは

株式会社では、会社に出資した株主は、取締役や代表取締役、監査役等を選任することができます。また、業績が良ければ配当金を受けることもできます。ただし、その利益の全部を配当することはできず、一定の金額を会社に留保しておかなければなりません。
仮に事業に失敗し倒産しても、株主が出資した金額は戻ってきませんが、会社の借金を負うことはありません。また、代表取締役や取締役は、保証人でない限り個人として会社の借金を負うことはありません。

▶合同会社とは

 合同会社は、平成18年会社法で新しく認められた会社で、社員(合同会社では出資者を株主とは呼ばず、社員といいます)が会社経営を行います。社員は株式会社と同様、会社の債権者に対して自分が出資した金額を限度として責任を負うのみです。また、定款について公証人の認証も不要で、決算公告の義務もありません。
このように合同会社は設立コストも、ランニングコストも株式会社に比べて安くできるというメリットがあります。デメリットとしては、社会的な知名度が低いことです。

▶会社設立の手続きについて

Q.会社を設立するにはどんな物・書類が必要ですか?
A.定款、出資者の印鑑証明書、出資社取締役の印鑑証明書、社印などが必要となります。
Q.定款とは何ですか?
A.会社の根本規則のことです。会社を設立する際には定款を作成しなければなりません。
株式会社は定款について公証人の認証を受けなければなりませんが、合同会社は認証が不要です。
Q.費用はどのくらいかかりますか?
A.①まず、資本金が必要となります。資本金は1円でも構いませんが、社会的な信用という面においては好ましくありません。銀行でお金を借りる際にも資本金が1円の会社では、なかなか貸してもらえないかもしれません。資本金は少なくとも10万円から100万円ぐらいとした方が良いと考えます。
②次に、株式会社の場合は、印紙代・社印作成費などの実費が約22万円。合同会社の場合は、印紙代・社印作成費などの実費が約8万円です。
*いずれも電子定款の場合ですので、電子署名をお持ちでない方は紙の定款となり別途4万円がかかりますが、司法書士等に依頼した場合は電子定款となり不要です。
株式会社 合同会社
内部自治(役員・機関設計、利益配分) 法律上の制限が多い 制限はない
定款の公証人の認証 必要 不要
役員の任期 最長10年 なし
決算公告 必要 不要
社会的認知度 高い やや低い
設立費用

定款認証
印紙代(電子定款は不要)
登録免許税

総額24万円

5万円
4万円
15万円

総額10万円

0円
4万円
6万円

*司法書士等の専門家に依頼した場合は、別途その費用が約6万円〜10万円が追加となります。

司法書士によるサポート

司法書士は登記の専門家ですので、定款作成から登記申請書類作成、登記申請まで代理(代行)いたします。電子定款も作成で印紙税4万円が不要となり、また、ご依頼人の業種にふさわしい会社の目的を提案し、役員の構成や任期などについてもアドバイスいたします。
会社設立の手続きを司法書士に依頼した場合の報酬は、事務所によって異なりますが、株式会社で約10万円、合同会社で6万円~10万円ぐらいです。

許認可の手続

▶許認可とは

特定の種類の事業を行うためには、保健所・警察署や都道府県などの行政機関に対して許認可を得なければ事業を始めることができません。住民の安全や生活を守るために手続きが必要となっています。
許認可を得ずに事業を行うと、事業停止命令や、最悪刑事罰である懲役や罰金に処されることになります。

許認可の種類

届出 届出をすることで、営業できます。
登録 名簿に登録簿にされると、営業できます。
認可 所定の要件を満たすことで、営業できます。
許可 所定の審査に合格することで、営業できます。
免許 特定の資格者が届け出て、所定の要件を満たすことで、営業できます。

業種にもよりますが、一般的に届出については、簡易的な手続で終わることが多く、登録・認可・許可・免許については時間がかかることが多くなります。

▶許認可取得に必要な要件

許認可に必要な要件は、大きく分けて3つあります。

人的要件・・・
資格者や指定の講習終了者、実務経験年数などの要件を満たした人が必要です。また介護など一定の業種は個人事業では許可を得ることができず、法人化しないといけません。  過去に法律に違反して処罰された個人又は法人は、一定の期間許認可が得られないこともあります。
設備立地要件・・・
必要な設備や店舗・土地の広さ、地域の用途制限や周辺施設等の要件があります。
資金要件・・・
建設業や旅行業、人材派遣業など一定の資金(資本金)がないと、許認可を受けられない業種もあります。

これらは基本的な要件であり、業種ごとにさらに様々な要件を満たし、必要書類を用意しなければなりません。先に事業所や設備を用意しても、上記要件を満たしていないため許認可を得られないこともあり、開業までの費用と時間が無駄になることがあります。
準備段階で事前に関係行政庁や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

▶許認可が必要な主な業種

区分 業種 申請先
届出 探偵業 インターネット異性紹介業 警察署
理美容業 クリーニング店 マッサージ業 保健所
登録 旅行業・旅行代理店業 ペットショップ 貸金業 電気工事業 電気工事業 ガソリンスタンド 都道府県
認可 警備業 自動車運転代行業 警察署
自動車分解整備業 保育所・私立学校
運輸局 都道府県(一部市町村)
許可 リサイクルショップなどの中古品の売買 中古自動車販売 質店 パチンコ店・バー キャバクラなどの風俗業 警察署
飲食店、食品製造業 薬局・ドラッグストア ホテル・旅館 音楽・演劇場などの劇場 保健所
介護事業・建設業 廃棄物処理業 都道府県(一部市町村)
労働者派遣事業・職業紹介業 労働局
タクシー業・運送業 運輸局
免許 酒の製造業・販売業・卸業 税務署
不動産業 都道府県

▶許認可が不要の主な業種

業種 注意点
通信販売業 ネットショップ自体は許認可不要です。ただし、取扱商品によっては許認可が必要です。例)中古品の売買、お酒の販売など
ネイルサロン 原則不要。化粧品を販売する場合は、必要となるケースもあります。
リース業・結婚紹介所 学習塾 これらの業種には、許認可や資格は不要です。
行政書士によるサポート

営業許認可の種類は多岐にわたるうえ、書類や設備等に不備があると開業までの期間が伸びてしまいます。行政書士は許認可申請の専門家です。依頼者に代わってスムーズに許認可申請を代行し、起業家が煩わしい手続に時間を割くことなく、本来の業務に専念できるようサポートいたします。

雇用に必要な手続と労務管理

法人を設立した時、労働者を雇用した時などには、公的保険の手続や適正な労務管理行わなければなりません。労働者の定義は、労働基準法で規定されていますが、同居の親族のみを使用する事業は労働基準法の適用除外とされることから、対象となる手続は、個別に判断する必要があります。

▶手続が必要な公的保険の種類

  • 労働保険(労災・雇用)
  • 社会保険(健康・介護・厚生年金)

▶公的保険の手続

労働保険(労働保険番号の取得と保険料申告)

ポイント:短期のアルバイトでも労災保険は必要です。

提出先:所轄労働基準監督署 又は 所轄公共職業安定所(ハローワーク)
※業種によって提出先が異なります

  • 保険関係成立届(初めて労働者を雇用してから10日以内)
  • 概算保険料申告書及び保険料の納付(初めて労働者を雇用してから50日以内)

※この2つの手続は、通常は同時に行います。

雇用保険(個別の加入手続)

ポイント:労働者の週所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用されることが見込まれる場合に必要な手続です。

提出先:所轄公共職業安定所(ハローワーク) 

  • 適用事業所設置届(対象となる労働者を雇用してから10日以内)
  • 資格取得届(入社の翌月10日まで)

※この2つの手続は、創業時は同時に行います。

社会保険(個別の加入手続)

ポイント:法人の場合は代表取締役1名でも必要な手続きです。

提出先:日本年金機構
※健康保険は健康保険組合等の場合があります。

  • 新規適用届(事実発生から5日以内)
  • 資格取得届(入社から5日以内)※状況により扶養異動届も必要となります。

※この2つの手続は、創業時は同時に行います。

▶その他の手続

提出先:所轄労働基準監督署

  • 適用事業報告(初めて労働者を雇用してから遅滞なく提出)
  • 36協定(時間外労働や休日労働が無ければ不要)
    ※毎年届け出が必要です。
  • 就業規則(常時使用する労働者が10名以上の場合に必要)

▶労務管理で必要な書類

  • 労働条件通知書(雇用契約書)の作成と明示
  • 法定三帳簿の整備
    労働者名簿 / 賃金台帳 / 出勤簿(タイムカード)
社会保険労務士によるサポート

社会保険労務士は労働分野の専門家です。創業時の各種手続や労務管理の体制作りの他、入退社に伴う手続書類の作成や提出代行、就業規則や賃金規程の作成、給与計算、社員研修、助成金の申請、各種年金の相談及び請求なども行っています。
また、過重労働やハラスメントなどのトラブルを防止する職場作りのサポートも致します。

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